昨日と同じ設定で淹れたのに、なぜか味が違う。エスプレッソを自宅で毎日淹れていると、多くの方が一度は経験する悩みです。
原因の多くは、その日の温湿度・豆の焙煎度・鮮度 という3つの外的要因にあります。この記事では、2016年からRancilio Rocky、2023年からRancilio Silvia Pro Xを使い続けてきた実体験をもとに、0.1g単位で粉量を微調整する具体的な方法を解説します。「数値と現象」に基づかない調整は、 再現性のない抽出 になります。
温湿度計から得る挽き目(メッシュ)の調整
私は、マシンのすぐ側に温湿度計を常設しています。コーヒー豆は、密閉した容器で管理しても少なからず湿気の影響があります。
夏(高湿度) : 豆が湿気を吸い、粒子同士が密着し抽出が詰まりやすくなります。数値が60%を超えたら、Rockyのクリックを一段「粗く」するか、粉量をわずかに減らします。
冬(乾燥) : 粉がサラサラになり、お湯が抜けやすくなります。40%を下回れば、クリックを一段「細かく」するか、粉量をわずかに増やします。
※冬と言えば静電気問題 があります。しっかりと除去することで抽出が安定します。こちらは別記事で解説したいと思います。
焙煎度による「抵抗」の違い
豆の「焙煎度」による水分量の差も重要です。
浅煎り豆:ベトナム産
浅煎り豆(高密度) : 水分が多く硬いため、お湯が浸透しにくいです。メッシュは「細かく」、温度は「高め(93〜95℃)」、蒸らし(ソフトインフュージョン)を長め(3~5秒)に設定します。
深煎り豆(多孔質) : 水分が抜け軽く、お湯に触れると一気に成分が出ます。メッシュは「粗め」、温度は「低め(90〜92℃)」に設定し、雑味を抑えます。
ホッパーは常に「空」、焙煎後1ヶ月内に消費
豆が酸化していては意味がありません。雑味を淹れない技術を身に付けることは重要ですが、豆のポテンシャルが最重要です。生鮮食品と覚えてください。
技術は鮮度を補うが、鮮度は技を凌駕する。
シングルドーシングの徹底 : ホッパーへの入れっぱなしは、酸化と吸湿を加速させます。私は「使う分だけその都度計量」を徹底しています。
1ヶ月以内ルールの徹底 : 1ヶ月を過ぎると雑味しか出ません。痺れるような苦味が口の中で続きます(後味が悪い)。1ヶ月に消費できる量だけを毎月購入することが望ましいです。
抽出量・抽出時間の記録
最終的な判断は、抽出量と抽出時間で行います。
1. 抽出の基本指標
理想のベース: 抽出のスイッチONで、3秒のソフトインフュージョン(蒸らし)から25〜30秒で目標量(例:30ml)に達するか。
調整のサイン: 15秒で落ちきれば「細かく」、40秒かかるなら「粗く」するのが基本のセオリーです。
※ソフトインフュージョン: 圧を掛ける前にお湯で湿らせ豆の成分を抽出しやすいようにする機能。
2. 焙煎度による調整
浅煎り・フルーティーな豆: 組織が硬いため、あえて30〜35秒と長め に時間をかけ、じっくりと甘みを引き出す設定がうまくいきます。25秒で落としきると、酸味が尖りすぎてしまう場合があります。
深煎り・クラシックな豆: 成分が出やすいため、20〜25秒と短め に切り上げることで、後味の雑味や過度な苦味を抑え、クリーンな抽出が出来ます。
ナチュラルプロセス(天日干し)等の個性派: 豆の持つ独特のフレーバーを活かすため、Silvia Pro Xのソフトインフュージョン(蒸らし)を5秒以上 取り、トータルの抽出時間をコントロールする工夫も必要です。
3. 抽出の安定
上記の抽出量、抽出時間は目安でしかありません。 環境によって全く異なります。自分で記録したデータが一番のレシピです。自分にとって美味しい軸を一本持ち、それに向かって調整が出来る技術を身に付けることが重要です。
美味しいエスプレッソとは
人の味覚は相対的な感覚です。
これだけです。
おまけ:抽出の安定を押し上げる110V環境
日本の電圧はAC 101V±6Vです。私は、アップトランス(変圧器)で110Vまで昇圧しています。機種が違う場合は必ず対応しているか確認して下さい。
エスプレッソマシンの起動が早い
抽出時の温度安定(PID制御:目標温度に向かって常に制御)
スチーム時のパワー安定(PID制御:目標温度に向かって常に制御)
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ABOUT ME
2009年、19歳でエスプレッソに出会って17年。デロンギ→Rancilio Silvia→Silvia Pro Xと機材を渡り歩き、現在はイタリアから個人輸入した家庭用最高峰マシンを実機運用中。機材の分解・修理も自前でこなす実践派。富澤商店の素材を使ったレシピと抽出技術を検証・記録しています。