Rancilio Silvia Pro X レビュー:17年かけて辿り着いた、家庭用エスプレッソマシンの終着点
導入:17年、私は「正解」を探し続けていた
2009年、19歳で手にしたデロンギの入門機。当時はエスプレッソの正解すら分からず、ただ「濃いコーヒー」を淹れる日々でした。その後、カプセル式の利便性に触れ、やがて「自分の手で味をコントロールしたい」という渇望から、2016年にイタリアからシルビアV3を個人輸入。
しかし、V3での7年間はマシンとの「格闘」でもありました。シングルボイラーの制約、不安定な温度制御……。そんな修行期間を経て、2023年、ついに私は家庭用マシンの最高峰、Rancilio Silvia Pro Xへと辿り着きました。
決断:V3の沈黙と、Pro Xへの「24万円」の投資
2023年9月、愛機V3の圧力が急激に低下。分解清掃や部品交換を尽くしても、かつての力強い抽出は戻りませんでした。
「修理か、買い替えか」
私の結論は、イタリアのEspresso Coffee Shopへの発注でした。本体価格と送料、関税を合わせ約24万円。国内正規代理店を通さず、構造を理解し自らメンテナンスする覚悟を持って「本場からの直輸入」を選びました。
実機レビュー:V3ユーザーが震えた「3つの決定的進化」
1. PID制御:1℃の狂いも許さない「デジタル脳」
V3は温度が常に10℃近く上下し、抽出のタイミングを計る「温度サーフィン」が必須でした。しかし、Pro XはPID制御。設定した温度を寸分違わず維持します。「マシンの機嫌」に左右されず、純粋に豆の挽き目だけに集中できる。この解放感は革命です。
2. デュアルボイラー:抽出とスチームの同時並行
V3最大の弱点だった「抽出後の加熱待ち」がなくなりました。Pro Xは独立した2つのボイラーを搭載。エスプレッソを落としながら、同時にミルクをシルキーなフォームに変える。このプロのワークフローが自宅で完結します。
3. ソフトインフュージョン:豆のポテンシャルを解き放つ
新たに追加された蒸らし機能。低圧で数秒間豆を湿らせることでチャネリングを防ぎます。V3では手動で苦労していた繊細な作業が、完璧な再現性を持って自動実行されるのです。
こだわり:110V昇圧(アップトランス)の導入
電圧の安定: わずか10Vの差ですが、これによりボイラーのリカバリー速度が向上し、PID制御のレスポンスがさらに鋭くなります。
圧力の視認性: 搭載された圧力計(マノメーター)を見れば、抽出の成否が一目瞭然。110V環境での安定したパワーが、正確な「9気圧」の維持を支えています。
実践:富澤商店の素材を活かす「ベース」としての役割
なぜ、ここまで機材にこだわるのか。それは、富澤商店(TOMIZ)の厳選素材で作るお菓子の魅力を最大化したいからです。
アミュプラザ博多店で出会った「スーパーヴァイオレット」や「粉糖」で作る、販売レベルの焼き菓子。その繊細な甘みを引き立てるには、機材のブレによる雑味は一切許されません。
「昨日の最高の一杯」を今日も出せる。 この再現性があるからこそ、素材とのマリアージュの検証が、初めて「科学」として成立するのです。
日常に「人生の彩り」を添える、一生モノの投資
24万円という投資は安くはありません。しかし、17年かけて辿り着いたこの景色には、それ以上の価値がありました。
自分で分解し、メンテナンスし、一生添い遂げる。そんな道具への愛がある方にとって、Silvia Pro Xは間違いなく人生を豊かにしてくれる相棒になります。
My Data
- 設定温度: 93.0℃
- 蒸らし時間: 4秒
- 電源環境: 日本仕様100V機 + 110Vアップトランス使用
- 購入先: Espresso Coffee Shop(イタリア)

